主に旅について、それから色々
世界最大旅客機「A380」は、かつて多くの航空会社が導入を検討したが、
現在では多くが運用を縮小または撤退。
そんな中で、エミレーツだけはA380を大量購入・大量運用し、現在も「フラッグシップ機材」の一つとして位置付けている。
何故、彼らはこの“巨大機材”を支持し続けるのか? 本記事では、その理由と戦略、そして将来展望を検証する。
・ドバイを起点に、世界の主要都市を結ぶネットワーク構造
エミレーツは中東・ドバイをハブに据え、「各地から乗客を集め、再分配する」ハブ&スポークモデルを採用。多くの乗客を一度に運ぶ必要があるこの戦略において、A380のような高座席数の大型機材は非常に合理的。
・スロット制限のある国際空港における“1スロットあたりの輸送力最大化”
主要空港の発着スロットには制約があるため、「便数を増やす」より「1便あたりの供給力を高める」ほうが効率的な場合がある。A380は1便で数百席を提供できるため、ハブ空港運用において他機材に対する優位が際立つ。
エミレーツはA380の広い機内スペースを活かして、 ファーストクラスの個室スイート、シャワー、ラウンジ、バーなど を導入。「単なる移動手段」ではなく、「旅そのものを体験」させるサービスを提供。
これは座席数による収益だけでなく、高単価プレミアム旅客の取り込みにもつながる。
このように、エミレーツは「大量輸送 × 高付加価値」という二軸でA380を収益化する戦略を取ってきた。
エミレーツは過去に、A380を最大178機購入する契約(2018年)を交わすなど、大規模な発注コミットメントをしていた。
最終的にA380は2021年に受領分123機をもって引き渡し終了となったが、エミレーツはそのうちの最大顧客となり、A380を“同社の顔=旗艦機材”と位置づけた。
この量的裏付けがあったからこそ、A380は単なる“実験”ではなく、同社の中長期戦略に埋め込まれた機材となった。
一方で多くの航空会社はA380から撤退、あるいは導入を見送った。その主な理由は下記:
これらの市場・技術の変化を背景に、A380の生産は2019年に終了(最終引き渡しは2021年)となった。
A380の生産終了後も、エミレーツは受領済み機の運用継続を宣言しており、2021年12月に123機目を受け取ったのが“最後のA380”だった。
さらに、最近ではA380用エンジンの整備・オーバーホール(MRO)体制の長期維持を検討するなど、 A380を2030年代半ばまで使い続ける意向 を示している報道もある。
A380の運用難は主に「燃費の悪さ・運用コストの高さ」にあるが、新素材や新エンジンなどで効率化すれば、再び“超大型機の価値”が復活する可能性がある。実際に、エミレーツの幹部は「もし改良されたA380があれば再注文する用意がある」と語っている。
つまり、A380が「昔の象徴」になるのか、「新生・超大型旅客機の先駆け」として復権するのか —— エミレーツの今後の動きは、航空業界全体の“超大型 vs 双発効率機材”という構造的対立の行方を占う“試金石”になり得る。
エミレーツがA380を使い続けるのは、単なる“昔の名残”ではありません。
「ハブ&スポーク型ネットワーク × 高座席数 × 高付加価値」「量的コミットメント」「ブランド価値の維持」という三位一体の戦略があるからこそ。
そして、たとえA380の生産が終わっても、整備体制の維持や機材の延命、新技術の適用を通じて、“世界最大級の旅客機”の価値を最大限に引き出す──それが、エミレーツの“勝ち筋”なのです。
今後もA380が空を舞い続ける限り、彼らの挑戦と航空業界の変革から目が離せません。
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