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UAE、アラブ首長国連邦にある2つの巨大航空会社があります。

✈️ 「エミレーツって何者?」──会社像と成り立ち

1) 基本情報(要点)

  • 正式名称:Emirates(エミレーツ)。本拠はドバイ、ハブはドバイ国際空港(DXB)。
  • 設立:1985年にドバイ政府(当時の支援)によって創業。最初の資本金は約1000万米ドル相当と言われます。
  • 組織:エミレーツは Emirates Group の中核で、最終的なオーナーはドバイ政府系の投資主体(Investment Corporation of Dubai)です。ただし運営は商業的に独立して行う方針が長く掲げられてきました。

2) どういう経緯で生まれたか(背景と立ち上がり)

  • 1980年代の地域環境:当時、湾岸地域の航空市場は急速に変化しており、ドバイは地理的に「欧州⇄アジア」の中継点としての価値を認識していました。
  • 1985年の創業ミッション:少額の出資で短期間に立ち上げられ、「(1)良い機内サービス、(2)見た目も良く、(3)商業的に自立する」ことが求められました。初期機材は外部からのリースや協力で確保され、そこからネットワークを拡大していきます。
  • 成長フェーズ:1990年代〜2000年代にかけてA330/340、B777、そしてA380など長距離大機材に投資。ドバイ国際空港の発着能力を最大限に活用する「ハブ&スポーク」戦略を突き詰めました。

3) エミレーツのビジネスモデル(“何を狙っているか”)

エミレーツの戦略は端的に言うと次の3点に集約されます。

A. 地理を最大活用した「ドバイハブ」戦略

ドバイを世界の接続点にすることで、東西(アジア↔欧州↔アフリカ)を結ぶ膨大な乗継トラフィックを取り込む。航路網は長距離国際線中心で、1回の便で大量の乗客を運ぶことを重視します。

B. 「スケールで勝つ」戦術(大型機材の大量導入)

エミレーツはA380をはじめとする超大型機材を大量に運用してきたことが特徴(A380の最大顧客)。大量座席でスロット制約のある空港でも「1回で多く運ぶ」ことで競争力を作ります。

C. ブランド化と高付加価値サービス

「空のラグジュアリー」を体現する商品設計(ファーストクラススイート、機内ラウンジ、充実したエンタメ)で高付加価値客を取り込み、単価の向上を図る。これにより「大量輸送×高単価」の両立を狙います。


4) なぜ成功したか(強み)

  • 政府の後ろ盾:立ち上げ時にドバイ当局の支援があり、インフラや投資の後押しを受けやすかった。
  • ドバイという場所の強さ:地理的に主要路線の中継に便利で、旅行者やビジネス客が乗り継ぎやすい。
  • 大胆な機材戦略:A380などで差別化し、フラッグシップ感を作り出した。
  • 商業運営重視:政府資本はあるが、市場で利益を出す方針により競争力を保った。

🛬 エティハド(Etihad)とは? ── もう一つの“大物”の成り立ち

1) 基本と沿革

  • 設立:2003年、本拠はアブダビ(首都エリア)。運航開始は2003年11月。設立はアブダビ政府の戦略的決定で、首長国の国際プレゼンス向上・経済多角化の一環でした。

2) エティハドの特徴的な戦略

  • 初期から**「フラッグシップ×バランス型」**で高品質サービスを武器に成長を目指した点はエミレーツと似ますが、やり方は異なりました。
  • 2010年代にかけて、エティハドは海外航空会社への出資(エクイティ投資)戦略を強め、アリタリア、エアベルリン、アリカンテ系列などに投資してネットワーク拡大を試みました(後に一部は失敗して再構築)。
  • 2016年以降の再建期では、出資リスクを縮小し、効率化と収益改善を重視する方向に転じています。近年は収益改善を示す報道も出ており、再成長フェーズに入っているとの評価があります。

🧐 エミレーツとエティハドは仲が悪い? 協力はあるのか?

  • ライバル関係が基本:両社は拠点(ドバイ vs アブダビ)が近接し、同じ国に拠点を置くため自然と競合します。特に乗継客や中東→欧州/アジア路線の取り合いが生じます。
  • でも協力もある:近年、観光振興や利用者便宜を目的にコードシェア/インターライン拡大の合意など協業の動きも出てきました(例:2023年の両社のインターライン拡大合意)。
  • 統合の可能性は低い:経営上の独立性や出資元(ドバイ vs アブダビ)が異なるためフル統合は現実的ではない — 公式にも「全面的な合併は可能性が低い」との見解が過去に表明されています。

🗺️ なぜ「UAE」という小さな国に『2つの大きな航空会社』が存在するのか?(背景と理由)

1) UAEは「連邦」──各首長国の独自戦略

UAEは7つの首長国(エミレーツ)から成る連邦で、ドバイとアブダビは富と権限を持つ主導的首長国です。各首長国が独自の経済戦略を描き、自国(首長国)を世界に売り込む“旗艦企業”として航空会社を持つことを選びました。したがって「UAE=1つの国」だが首長国ごとの政策として2社が育った、という構図です。

2) 競争を通じた国際プレゼンス獲得

  • ドバイは「ドバイ自体を観光・商業ハブにする」ためにエミレーツを育てた。アブダビは別の首長国として自らの存在感・観光・経済多様化を進めたく、エティハドを創設しました。結果、UAEには2つの“国家的ブランド”が並立することになったのです。

3) 空港資源が分散している点

  • ドバイ(DXB)が超大型ハブ化する一方、アブダビ(Zayed International)も大規模なターミナル整備や路線拡張を行い、それぞれの空港が別個に国際ネットワークを持てる環境が整備されました。両者が別のゲートウェイを目指すことにより、2社の共存が可能になった面があります。

🔮 将来の見通し

  • エミレーツ:スケールと高付加価値で成長維持。A380の扱いや燃費効率の課題にどう対応するかが鍵。
  • エティハド:再建と効率化を経てネットワーク拡大中。政府系資金(ADQ)による支援で中長期的な拡張計画が進む。
  • 関係性:完全な合併は想定しにくいが、購買やサービス面での協業(調達、インターライン等)は引き続き進む可能性が高い。

✍️ まとめ

  • エミレーツは1985年創業、ドバイの地理的優位と政府支援を活かし「巨大ハブ×大型機でスケールを取る」戦略で世界的成功を収めた航空会社です。
  • エティハドは2003年にアブダビが設立したもう一つのナショナルキャリアで、当初は積極的な海外出資でネットワークを広げましたが、近年は効率化と収益改善を進めています。
  • UAEに2社がある理由は、UAEが複数の自治単位(首長国)で構成され、ドバイとアブダビがそれぞれ自らの国際プレゼンス向上のために航空会社を国家戦略の一部として育ててきたからです。競争と協力が混在する独特の生態が生まれています。
Post date : 2025.12.09 14:33