なんとなく、なんでも雑記
200段以上の階段、しかもトンネルの中に設置された階段を通り抜けて初めて見た黒部ダムは、
とても良かった。
良い天気では無かったけど、たいして雨も降っていなかった。パラパラ程度。降ったり止んだり。
予報では、土砂降りのはずでしたけどね。
ダムの堰堤を通って、反対側に行くのが次のステップ。ケーブルカーの乗り場がダムの向こう岸にあるから。
でも、急ぐ旅ではない(多分)。夕方までに富山にたどり着けばいいのだ。
展望台は2段構造になっていて、1Fは屋内展望台、屋上は開放式の展望台になっていた。
展望台1Fには軽食販売コーナーも設置されているようだけど、営業していなかった。
私は屋上展望台でしばらく黒部ダムを飽きるまで見てから、堰堤まで降りる事にした。
堰堤に降りるには2つのルートがあって、一つは、さきほど登ってきたトンネル階段を降りるルート。
そしてもう一つは、外階段を降りるルートだ。
もちろん、外階段を選択した。
しかし、この外階段というヤツは、ちょっと怖い。
コンクリートの壁に、鉄骨の細い梁が生えていて、そこに鉄板で階段が作られているというスタイルで、
「これ、鉄が腐食してたら落ちて死ぬヤツじゃね?」的な、アクション映画なんかでは銃撃戦とか格闘戦とかのシーンで出てきそうな、
高所恐怖症の人は絶対ダメなタイプの階段なのだ!
なんでここに観光客を通すんだろうか?
大丈夫なんだろうか?
すれ違い、怖いんだけど。
などと、ビビリの私は思っていたが、もちろん、絶対大丈夫だから開放されている訳で、
映画みたいに いきなり崩落したり、銃撃されたり、爆発したり はしない。
しかし、滑ることはあるかもしれないので、気を付けるべきだと思う。
天候によっては、閉鎖されて通れない事もあるらしい。
階段を降りる度に、ダムの見える角度が変わって、とても良い。
黒部ダムは重力式とアーチ式を組み合わせたコンバインダム(複合ダム)で、それだけに、重力式部分とアーチ式部分で下流側から見た壁面の角度が違い、複雑な造形美が醸し出されていると思うのだけど。
階段を降りていくと、どちらも見える角度が変わっていくのだ。面白い。
また、堤高が186mもある巨大な人工物であるにも関わらず、ダム以外が全く手つかずの自然のままという対比に、とてもインパクトがある。
黒部川には人工流路がダム付近にしか無いし、山には砂防やがけ崩れ防止工事の様子が、ほぼ見られない。
ダムと、ダム付近の観光施設や管理施設、ダム工事に使われた巨大なコンクリート構造物が人工物を主張しているが、この、圧倒的な厳しい自然においては、そのインパクトも限定的。
ここの主役は、やはり自然なのだ。
そこに爪痕を残しているだけでも、人間にとっては大きな偉業だとわかる。
堰堤まで降りてきたら、少しの雨だったけれども結構濡れてしまった。
タオルを買った。
『黒部ダム』『発電専用』『安全第一』などの文字が躍った昭和感溢れるタオルが、令和日本に生きる私にも、当時の人達の熱い想いが伝わるような気がした。
ダムの堰堤上を対岸へ渡る。
おもったより遠い。
ダム中心まで来るだけでも、結構歩いた。
下流側は、切り立った壁のダム堰堤、途中からすごい勢いで水が飛び出ている。
ふと、身を空中に置けば浮遊できるんではないだろうか?という錯覚が現実に思えてくるが、もちろんそんな事をすれば186m下のコンクリートに “ぺちょっ” となるか、あるいは途中の暴力的な圧の掛かった水に吹っ飛ばされて、空中で手足がちぎれたりしながら、もしかしたら黒部川の自然石まで飛べるかもしれない。
上流側は、2億立米とかいう、いまいちピンと来ない貯水量を湛えた黒部湖に、多分ここ数日の不順な天気のせいで流されてきた流木っぽいものたちがダムで溜まったりしていた。
なんか一部丸く流木がなっているのは、取水口がその下にあるか、破砕帯の水の排水口がなんかあの辺にあった気がするから、その水の流れのせいで丸くなっているだけで、きっと電磁波がどうとか、宇宙人の仕業とか、立山の神聖なパワーであるとかとは違うはずだ。
一人で観光に来たヤツが、ふと自分を振り返る時間ができてしまった観光地のど真ん中で考える事なんか、こんなもんだ。
ちなみに、2億立米というのは、東京ドーム16杯分の容量らしい。
いや、それもどうかと思う例えやね。
対岸付近まで歩いて、重力式部分の上では、『この、山との間の無駄な空間はなぜ開けてあるのだろうか?』などと思ってしまった。
おそらくは、コンクリート使用量を無駄に増やす必要性が無かったから、だとか、
変に山体に負荷が掛かって崩落や崩壊があっても困るから、とか、
それぐらいの理由なんだろうなぁ。
昭和30年代の関西電力が、総力を挙げて作り上げた英知と努力の結晶、黒部ダム。
今でも発電に使われている現役のダムだけど、
関西電力における電源構成で、水力の占める割合は 9.5%
決して小さいわけではないけれど、
原子力の 27.0% や、
火力の 38.6% に比べたら、
大きいわけでもない。
歴史の流れの中で、相対的に電源としての重要性が低くなってきているのは、仕方がない事なのかもしれない。
それでも、
ここに実際に来て、黒部ダムを見る事ができたのは、
私にとって、とても良かったと思う。
また、来てみたいものだ。
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