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先日、国会で立憲民主党の大串博志議員が、高市首相に対し、台湾有事における「存立危機事態」の認定について、繰り返し質問したことが話題となりました。
この質問が「失言を誘うようなものだ」と私は思い、大いに憤りを感じました。

この問題は、日本の安全保障政策における非常にデリケートかつ重要な論点を含んでいます。


1. 🔍 「存立危機事態」とは何か?

まず、日本の安全保障を規定する平和安全法制(2015年成立)において、自衛隊が武力行使を行うための要件は、以下の3つの段階に分類されています。

  1. 武力攻撃事態:日本に対する直接的な武力攻撃が発生した場合。
  2. 存立危機事態:日本と密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合。
  3. 重要影響事態:日本の平和及び安全に重要な影響を与える事態(かつての「周辺事態」)。

「存立危機事態」と認定されると、日本は集団的自衛権の一部を行使し、他国軍(主に米軍)を防護するための武力行使(限定的な武力行使)が可能になります。


2. 台湾有事が「存立危機事態」となる可能性

台湾有事が日本にとって「存立危機事態」に該当する可能性は極めて高いとされています。

  • 地理的近接性: 台湾は日本の与那国島からわずか110kmほどの距離にあり、南西諸島は台湾を囲むような位置関係にあります。
  • 軍事的な影響: 台湾海峡での紛争は、日本のシーレーン(海上交通路)を遮断し、経済活動に深刻な打撃を与えます。また、戦闘行為が沖縄県やその他の南西諸島の領空・領海に及ぶリスクも非常に高いです。
  • 米軍との関係: 台湾有事の際、日本国内の米軍基地(沖縄、横田、佐世保など)は、台湾防衛のための出撃拠点となる可能性が高く、結果としてこれらの基地が攻撃対象となる危険性が高まります。

このため、私を含めて多くの有権者の方々が「当然認定されるべき」と考えるのは、安全保障上の現実的な危機意識に基づいていると言えます。


3. 🗣️ なぜ国会で政府は明言を避けたのか?

首相が国会で「一概に申し上げられるものではない」「個別具体的な状況に照らして判断する」と答弁し、明確な「Yes」を避け続けたのには、主に二つの理由があります。

A. 政治・外交上の配慮

政府が「台湾有事=存立危機事態」事前に断定してしまうと、以下の外交・政治的リスクが生じます。

  • 中国への刺激: 中国(中華人民共和国)に対して、日本が台湾問題に軍事的に介入する意思を明確に表明することになり、必要以上に緊張を高める可能性があります。日本は、中国との関係において「戦略的曖昧さ」を維持する必要があります。
  • 「宣戦布告」と誤解されるリスク: 事態が発生していない段階で特定の条件を「武力行使のトリガー」として公言することは、国際的な緊張を高める要因となりえます。

B. 法的・憲法上の制約

「存立危機事態」の認定は、時の内閣の裁量による極めて重い判断です。法制上、「明白な危険」の有無は、個別具体的な事態の推移、すなわち「どの国が、いつ、どこで、何を、どのように行ったか」によって総合的に判断されなければなりません。

  • 抽象的な質問への回答: 「もし〇〇が起きたら?」という抽象的・仮定的な質問に対して「必ずYes」と答えてしまうと、内閣の判断の自由度を縛り、将来的に憲法違反の疑いを持たれるリスクも生じます。例えば、極めて小規模で限定的な紛争であっても、過去の「Yes」答弁に縛られて、不当に大規模な集団的自衛権の行使を強いられる可能性を排除できません。

まとめ

大串議員の質問の背景には、政府に「台湾有事への介入意思」を明確にさせる意図(または、野党として政策の曖昧さを批判する意図)があったと考えられます。

個人的には、そういう大局を見たスケールの話ではなく、大串議員は ただ単に首相に失言をさせて貶めたいという姑息な魂胆があったようにしか思えませんけれども…

一方、政府の答弁は、外交上のデリケートさと、憲法・法制上の厳格な判断要件を遵守しようとする姿勢の表れと言えます。一般に危惧される通り、台湾有事は日本の安全保障に直結しますが、それでもなお「一概には言えない」という慎重な姿勢は、国益を守る上での戦略的な含みがあると言えるでしょう。

ただしかし、
「存立危機事態」を認定する可能性が高いという認識を明らかにした事は、大変意義がある事だと思います。
台湾有事は、あきらかに日本にとっては無視できない事態である事は明白なのです。

Post date : 2025.11.12 23:39