むるむる ブログ

主に旅について、それから色々

AD

日本のフェリー業界を牽引する「さんふらわあ」シリーズは、豪華な船内設備だけでなく、環境性能においても世界のトップを走っています。

今回は、日本の長距離カーフェリーとして初めてLNG(液化天然ガス)燃料を本格導入し、時代の幕を開けた**「さんふらわあ くれない」「さんふらわあ むらさき」。そして、その技術を継承し、2025年に就航予定の「さんふらわあ かむい」「さんふらわあ ぴりか」を比較しながら、その驚異的な環境技術と、低燃費を実現する秘密の船型「ISHIN船型」**について、詳細な技術解説を交えて深掘りします。


1. 🚢 LNG燃料時代のパイオニア:「くれない」と「むらさき」の功績

2023年に相次いで就航した「さんふらわあ くれない」と「さんふらわあ むらさき」(大阪~別府航路)は、日本の長距離カーフェリー史上、極めて重要な役割を果たしました。

① 日本初のLNG燃料カーフェリー

両船は、日本の主要な長距離カーフェリーとして初めてLNG(液化天然ガス)を主燃料として採用しました。

  • 技術: 主機関にLNGとA重油の二元燃料エンジンを採用。これにより、CO2排出量を従来の船と比較して約25%削減し、硫黄酸化物(SOx)排出量をほぼゼロに抑えるという高い環境性能を達成しています。
  • 功績: この成功が、LNG燃料船の実用性、安全性、経済性を証明し、日本の海運におけるエコシフトを牽引する礎となりました。

② 究極のホテルシップとしての快適性

技術面だけでなく、プライバシーと快適性を極限まで高めた豪華な船内設備は、**「移動手段」から「滞在体験」**へと船旅の価値を高めました。


2. 🛳️ 技術を継承し進化:「かむい」と「ぴりか」の未来

「さんふらわあ かむい」と「さんふらわあ ぴりか」は、2025年に大洗~苫小牧航路への就航が予定されている最新鋭船で、「くれない・むらさき」で確立された技術を継承しつつ、さらに進化させています。

① LNG燃料の継続採用

  • 環境性能: 「くれない・むらさき」と同様、LNG燃料を採用することで、長距離の北海道航路においても高い環境性能を発揮し、海域の環境保全に貢献します。
  • 航路特性への対応: 北海道航路の特性に合わせ、荒天時にも乗客が安心して過ごせるよう、船型や安定装置がさらに最適化されていると見られています。

② 技術の水平展開

これら4隻が共通して最新技術を導入していることは、環境負荷の低い船のフリート(船隊)化を目指す、商船三井グループの強い意志の表れであり、日本の海運業全体のエコシフトを加速させています。


3. 💡 燃費効率の鍵:「ISHIN船型」と「STEP」技術

「かむい」「ぴりか」、新型フェリーの圧倒的な低燃費化を支える核となるのが、「ISHIN船型」と、それを具現化する技術です。

① 伝統と革新の融合「ISHIN船型」

ISHINは「Innovation in Sustainability backed by Historically proven, INtegrated technologies」の頭文字をとったものです。

  • 丸みを帯びた流線型の船首: 最大の特徴は、波浪抵抗を最小限に抑えつつ、斜めの向かい風を揚力(推進力)として利用可能にするという、空気力学と流体力学の融合した設計です。これにより、荒天時でも燃費効率の低下を抑える効果があります。
  • 推進効率の最大化: 船体後部の水流を整えるための最適化された形状と、大型の高効率プロペラを採用することで、同じ燃料でもより速く、より安定して航行することを可能にしています。

② 波を抑える省エネ装置「STEP」

一部の新型船に採用されているのが、海上技術安全研究所と内海造船の共同開発による技術**「STEP(Spray TEaring Plate)」**です。

  • STEPの役割: 船首で波を切った際に発生する、抵抗の原因となる**「水しぶき(スプレー)」**を効果的に抑え、抵抗を軽減するためのプレート状の装置です。
  • 効果: 実海域での運航において、このスプレー抵抗を減らすことで燃費効率をさらに向上させ、ISHIN船型の効果を補完しています。

4. 📝 まとめ:日本の英知が創る、持続可能な船旅

「さんふらわあ」の新型LNGフェリーは、日本の海運業界の未来を象徴しています。

「くれない・むらさき」がパイオニアとしてLNG燃料を実用化し、その技術と経験を基に**「かむい・ぴりか」が北海道航路の環境性能を押し上げる**。ISHIN船型やSTEPといった革新技術でその性能を極限まで高めました。

これらの新型フェリーは、地球環境への貢献と、乗客への最高水準の快適性を両立させ、持続可能で質の高い船旅という新たなスタンダードを築いています。

Post date : 2025.11.17 17:20