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現代の巨大船の驚異的な機動性を支えるのは、360度回転するアジマススラスターと、船首を振るバウスラスターの連携です。

さらに最近、このアジマススラスターの動力源が、従来のディーゼルエンジン直結から電動モーター駆動へと大きくシフトしています。

今回は、この「モーター駆動アジマススラスター」の採用が、船の操縦性だけでなく、船内設計にまでいかに大きな革命をもたらしているのかを解説します。


1. ⚙️ モーター駆動へのシフト:アジマススラスターの進化

従来の大型船は、ディーゼルエンジンの出力をギアやシャフトを介してプロペラに伝達するのが一般的でした。しかし、アジマススラスターへの電力供給にモーターが使われるケースが急速に増えています。

① モーター駆動の仕組み

  • ディーゼル発電機: 船内には、航海用エンジンとは別に、発電専用のディーゼル発電機(またはLNGなどのガスタービン)が搭載されています。
  • 電力による推進: この発電機が生み出した電力が、ケーブルを通してアジマススラスター内部の強力な電気モーターに送られ、プロペラを回転させます。

② 精密な出力制御

モーター駆動は、エンジン駆動よりも出力のON/OFFや回転数の調整が非常に簡単かつ精密に行えます。これにより、定点保持(DPS)や、狭い港での微細な操船が、より正確かつ迅速に行えるようになりました。


2. 🏰 船内設計に革命!エンジンの配置の自由度

アジマススラスターをモーターで駆動することの最大の副次的メリットは、船の主要な推進機関であるエンジンの配置に関する制約が劇的に緩和されることです。

① シャフトの制約からの解放

従来の推進システムでは、エンジンとプロペラを繋ぐ**長大な推進シャフト(軸)**を船の船尾まで一直線に通す必要がありました。このシャフトが、客室や貨物スペースの設計において大きな障害となっていました。

② エンジンルームの自由配置

モーター駆動では、推進力がシャフトではなく電力ケーブルで伝達されるため、以下の自由度が生まれます。

  • エンジンの分散配置: エンジンを船内の**比較的自由な場所(例:中央部や上部など)**に分散して配置できます。これにより、船底や船尾の空間をエンジンルームに縛られることなく、最大限に活用できるようになります。
  • 客室スペースの最大化: 船尾の低層階は、シャフトやエンジンに占拠されていたスペースが開放され、より静かで広い客室、レストラン、あるいは追加の貨物スペースとして利用できるようになりました。豪華客船の設計者は、この自由度を利用して、客室の配置やデザインを大胆に変更できるようになっています。

3. ⚓️ 連携が生む「超絶技巧」:アジマスとバウスラスター

このモーター駆動のアジマススラスターは、船首のバウスラスターと連携することで、巨大船に完璧な機動性をもたらします。

スラスター動力システム主な連携効果
バウスラスター電動モーターが多い船首の横押し、横移動の開始をサポート
アジマススラスター電動モーターが多い推進力の全方向発生、タグボートなしでの精密接岸

両者を電動モーターで駆動することで、コンピューターによる集中制御が容易になり、巨大船でもあたかも小さなボートを操るかのような、正確無比な操作が可能になります。


4. 📝 まとめ:電動化が導く未来の船

モーター駆動アジマススラスターの採用は、単なる技術的な進歩ではなく、船の性能、設計、そして運行効率を根底から変える革命です。

これにより、私たちはより安全で静か、そして豪華な旅を楽しむことができ、海運会社はより効率的で環境に優しい船の運航が可能になりました。電動化が、海運の未来を賢く、そして柔軟に形作っているのです。

Post date : 2025.11.18 16:20