むるむる ブログ

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――「残すか、廃止か」ではない第三の選択肢

はじめに

JR芸備線。
広島県と岡山県を結ぶ山間のローカル線であり、
いまや「存廃問題の象徴」のように語られています。

利用者は少ない。
赤字は深刻。
JR西日本も自治体も、簡単な答えを持っていない。

しかし本当に、
「廃止」か「税金で延命」しか選択肢はないのでしょうか?

結論から言えば、
芸備線を救う鍵は「鉄道として救おうとしないこと」にあります。


① 芸備線が苦しい“本当の理由”

まず、現実を直視します。

芸備線の構造的問題

  • 沿線人口が少ない(しかも減り続けている)
  • 通学・通勤需要が限定的
  • 自動車依存が極めて高い地域
  • 列車本数が少なく、利便性が低い
  • 観光利用が「点」で終わっている

これは運行努力で解決できる問題ではありません。
「地方だから」ではなく、「時代が変わった」のです。


② 「昔の成功体験」を捨てる

芸備線議論でよくあるのが、

  • 本数を増やせば人が戻る
  • 観光列車を走らせれば黒字化する
  • 駅をきれいにすれば利用者が増える

という発想です。

残念ですが、
これはすでに全国で失敗済みの処方箋です。

✔ 日常利用がない路線は、観光だけでは支えられない
✔ 利便性を上げても、人口減少には勝てない

芸備線を救うには、
「鉄道を主役に戻す」ことを一度諦める必要があります。


③ 発想転換①:芸備線を“交通”から“インフラ”へ

芸備線は、
大量輸送の鉄道としては負けています。

しかし別の価値があります。

芸備線が持つ唯一無二の強み

  • 山間部を貫く公共インフラ
  • 除雪・災害時の代替ルート
  • 高齢者・免許返納層の命綱
  • 地域の「線」でつながる象徴性

ここで重要なのは、

「儲かるか」ではなく「無いと困るか」

道路は赤字でも残ります。
上下水道も赤字でも残ります。
芸備線も同じ“生活インフラ”として再定義すべきです。


④ 発想転換②:上下分離+自治体主導

現実的な解決策の一つが、

上下分離方式

  • 線路・設備:自治体(または第三セクター)
  • 運行:JR西日本 or 委託事業者

これにより、

  • JRは過度な赤字リスクを負わない
  • 自治体は「地域インフラ」として管理できる
  • 補助金の透明性が上がる

「JRが悪い」「自治体が悪い」という対立構造を終わらせるためにも、
責任の切り分けは不可欠です。


⑤ 発想転換③:バスと“競争させない”

芸備線とバスは、競合させるべきではありません。

あるべき姿

  • 幹線:芸備線(少本数・確実運行)
  • 枝線:デマンドバス・コミュニティバス
  • 駅=交通結節点

重要なのは、
「鉄道に合わせてバスを動かす」こと

これができていない地方が、
鉄道もバスも共倒れしています。


⑥ 発想転換④:「観光列車」ではなく「観光動線」

芸備線単体で観光客を呼ぶのは無理があります。

ではどうするか。

芸備線の観光再設計

  • 三次・庄原・備後落合を“滞在拠点”に
  • レンタカー・Eバイクと完全連携
  • 「乗ること」ではなく「使うこと」が目的

つまり、

芸備線は“入口”でいい

鉄道だけで完結しようとするから失敗します。


⑦ 最終手段:それでもダメなら、どうするか

ここまでやってもダメなら、
廃止という選択肢から目を逸らすべきではありません。

ただし、

  • いきなり廃止
  • 代替交通なし
  • 地域切り捨て

これは最悪です。

正しい終わらせ方

  • 段階的縮小
  • 代替交通の完全整備
  • 鉄道資産の地域転用(観光・防災)

「守る努力をしたかどうか」
それが地域の納得感を決めます。


おわりに

芸備線は「地方の未来」を映す鏡

芸備線問題は、
鉄道の問題ではありません。

  • 人口減少社会で
  • インフラをどう維持するか
  • どこまでを公共が支えるのか

その答えを、日本全体がまだ持っていないだけです。

芸備線を救うとは、
地方の生き方を再設計すること

だからこそ、
この議論は避けてはいけないのです。

Post date : 2026.01.15 20:52