むるむる ブログ

主に旅について、それから色々

AD

スペイン旅行を調べていると、必ず一度は目にする名前がある。 Parador(パラドール)だ。

「歴史的建物に泊まれるらしい」 「国営ホテル?」 「高級なの?普通なの?」

多くの日本人にとって、 パラドールは聞いたことはあるが、よく分からない存在だろう。

本記事では、

  • パラドールとは何か
  • なぜスペインにしか存在しないのか
  • 今、どんな課題を抱えているのか

を、制度・構造・観光政策の視点から、 初めての人でも分かるように解説する。
筆者は、一度だけ宿泊した事がある。(自慢)


結論:パラドールは「ホテル」ではなく「国家観光政策」

最初に結論を言う。

パラドールとは、 スペイン政府が 歴史と地方を守るために作った 国家プロジェクトである。

快適さやラグジュアリーが主目的ではない。


パラドールとは何か?(超ざっくり)

パラドールとは、

  • 修道院
  • 要塞
  • 歴史的邸宅

といった歴史的建築物を改修し、 国が運営するホテルチェーンだ。

  • 創設:1928年
  • 運営主体:スペイン政府系企業
  • 施設数:約100軒

👉 世界でもかなり珍しい存在である。


なぜスペインにパラドールが生まれたのか

背景には、 スペイン特有の3つの事情がある。

① 歴史的建築が多すぎる

スペインには

  • ローマ時代
  • イスラム支配
  • キリスト教王国

という複雑な歴史があり、 保存すべき建築物が異常に多い

だが、 地方にある建物は 観光客も少なく、

保存=赤字

になりがちだった。


② 観光客が都市に集中しすぎた

  • バルセロナ
  • マドリード
  • セビリア

一方、 地方は過疎化が進行。

そこで国は、

「泊まる理由」を地方に作ろう

と考えた。


③ 観光を“産業”として国家管理した

スペインは早くから

観光=国家戦略

と位置付けていた国だ。

その象徴がパラドールである。


パラドールの特徴(普通のホテルと何が違う?)

① 立地が特殊すぎる

  • 山の上の城
  • 城壁の中
  • 人里離れた修道院

アクセスは不便なことも多い。


② 高級ホテルではない

ここが重要だ。

パラドールは

超高級ホテルではない

  • 価格帯:中〜やや高め
  • サービス:実直で質素

「体験型宿泊施設」に近い。


③ 国が運営している

利益最大化が目的ではない。

  • 建物保存
  • 雇用創出
  • 地方観光促進

これらが優先される。


パラドールを取り巻く現在の状況

課題① 老朽化と維持費

歴史的建築の維持には 莫大なコストがかかる。

  • 空調
  • バリアフリー
  • 耐震

現代基準との衝突は避けられない。


課題② 若年層・外国人に伝わりにくい

パラドールは、

「地味」

と思われがちだ。

  • SNS映えしにくい
  • 仕組みが分かりにくい

という弱点がある。


課題③ 民間高級リゾートとの競合

  • AMAN
  • Four Seasons

のような 体験型高級リゾートが増える中、

どこで差別化するか

が問われている。


それでもパラドールが生き残る理由

理由は明確だ。

パラドールに泊まれる建物は、 パラドールにしか存在しない

  • アルハンブラ宮殿近く
  • 中世の城郭
  • 修道院の回廊

これは民間では再現不可能だ。


日本への示唆:なぜ日本に“パラドール”がないのか

日本にも

  • 古民家

は多い。

だが、

  • 宗教法人の壁
  • 文化財規制
  • 合意形成の難しさ

により、 国家主導の宿泊網は作れなかった。

パラドールは、

スペインという国家だから成立したモデル

なのだ。


まとめ:パラドールは「泊まれる歴史教科書」

パラドールは、

  • 贅沢を売るホテルでもなく
  • 効率を追うビジネスでもない

歴史を守るための観光装置

である。

もしスペインを旅するなら、 1泊だけでもパラドールを選んでみてほしい。

そこには、

「観光とは何のためにあるのか」

という問いへの、 スペインなりの答えが詰まっている。

Post date : 2026.02.07 16:09