主に旅について、それから色々
11月28日、EASA(欧州航空安全機関)は、A320ファミリー(A319/A320/A321)に対し、緊急耐空性改善命令(EAD)を発出しました。(A318は対象外)
対象となったのは、飛行制御コンピューターである ELAC(Elevator & Aileron Computer) を搭載する機体です。
このEAD は、通常の AD(耐空性改善命令)よりも高い緊急性をもつものです。理由は、ただの定期的な整備や点検ではなく、“即時の修正または交換”を求める指令となっているためで、飛行継続の安全性に直結するレベルの問題と判断されたためです。
背景には、10月30日にアメリカで起きた、ある A320 機(JetBlue 所属便)による「操縦士操作なしでの突然の機首下げ(ピッチダウン)」という非常事態があり、その原因分析の結果、ELAC のデータ破損の可能性が浮上したことがあります。
今回の問題の本質は、「ELAC が処理するフライトコントロールのデータが、強い太陽放射(宇宙線)などによって破損する可能性がある」という点にあります。
そのため、対策としては以下のような方法が取られています:
EASA の EAD は、これらの手段によって “serviceable な ELAC” の状態を確保することを義務づけています。
つまり、問題が「データ破損しやすいソフトウェア/ハードウェア構成」であったため、それを“安全な構成”に置き換えることで、リスクを根本から除去するわけです。
今回の問題の引き金となったのは、いわゆる「宇宙線」の増加、特に強い「太陽フレア」「コロナ質量放出(CME)」などによるものと報告されています。
高空を飛ぶ航空機は、地上よりも宇宙線の影響を受けやすく、特に電子機器のマイクロプロセッサーや記憶装置では「ビット反転(メモリ上のデータが書き換わる、破損する)」などの異常が起きる可能性があります。これが、ELAC にとって致命的――飛行制御データが乱れれば、機体挙動が予期せぬものになる恐れがあるのです。
今回の件では、こうした宇宙線/太陽放射の影響を想定した安全性試験が、従来の認証段階では十分ではなかったことも明らかになり、業界全体にとって警鐘となっています。
EAD「2025-0268-E」 は、即時対応を義務づける指令です。もし対象機が対策なしのまま飛行を続けた場合、最悪は「機体構造の限界超過に至るような事故」を引き起こす可能性もあるとされています。
多くの航空会社がこの指令を受け、即時に整備スケジュールを組み始めています。たとえば、ANAではこの命令を受けて一部便に欠航が出ているとの報道があります。
世界的には約 6,000 機の A320 系機が影響対象となっており、その規模と緊急性は、過去に例を見ないほど大きなものです。
EAD「2025-0268-E」は、単なる注意喚起ではなく、A320 系機の安全性を守るための 緊急命令 です。
ELAC の交換/改修という対策によって、宇宙線によるデータ破損リスクを除去することが可能であり、航空会社各社は対応を急いでいます。
太陽フレアや宇宙線という“見えない脅威”が、実際に空の安全に直結しうる――今回の事件は、その重要性を改めて示しました。
私たち乗客や航空関係者も、ただ「飛んで当然」と思うのではなく、こうしたリスクに対する理解を深め、安全への取り組みを支持していくことが求められています。
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