但馬空港は、本州では唯一の同一県内路線を持つ、いや、同一県内路線しか持たない空港です。
🏔️ 但馬空港とは:そもそもの目的と立地
- 但馬空港は、兵庫県北部(豊岡市)および但馬地域の“鉄道・高速道路網が未整備/アクセス不便な地域の高速手段確保”を目的として、1994年に開港しました。
- ただし滑走路の長さは 1,200メートル。この短さが、空港の性質と限界を決定づけています。
つまり、但馬空港は「地方の過疎地におけるアクセス手段の確保」という目的で作られた“ミニ空港”。最初から“大型機・多路線”を想定した空港ではありません。
🎯 なぜ伊丹(大阪)便しかないのか — “滑走路の制約 × 需要の現実”
1. プロペラ機しか運用できない滑走路規模
- 滑走路が1,200メートルでは、大型ジェット機の離着陸は不可能。結果として、定期便に使える機材は プロペラ機(たとえば ATR42/ATR72 など) に限定されます。
- プロペラ機は座席数・航続距離・コスト効率の面で限界があるため、この条件だと「近距離の中距離――しかも過密なダイヤが組みづらい」現実があります。
2. 需要のサイズと採算性の問題
- 但馬地域は人口が少なめで、年間旅客数・利用者数も大きくはありません。実際に、かつて「滑走路延長+羽田便を」との構想もあったものの、”十分な需要”という点で厳しいとの指摘があります。
- また、近隣に鉄道(特急や鈍行)やバス、高速道路網が整備されると、飛行機の“速さ・利便性”の優位が小さくなるため、利用者の絶対数を確保しづらいという構造的な制約があります。
3. 採算の観点から「多路線化は非現実的」
- 仮に羽田直行便や他都市路線を設けたとしても、機材制限+利用者数の少なさでは、航空会社側にとって収益性が見えにくい。
- 実際、但馬空港では伊丹便が1日数便あるのみで、しかも「プロペラ機」を使った“地域アクセス路線”に限定されています。
- 「採算が合わない路線を維持するのは難しい」という現実があります。
こうして、“滑走路の制約 × 需要の限界 × 採算性の壁”という三重の構造制約が、但馬空港の「伊丹便のみ」路線体制を生んでいます。
🛠️ “羽田便”や“他路線”構想はあった ― しかし実現しなかった理由
- 実は過去、地元自治体・兵庫県は但馬空港の 滑走路延長(1,200 m → 2,000 m級) を計画し、ジェット機就航・羽田直行便・国際便・LCC誘致などを検討していました。
- 滑走路が2,000 m級になれば、ジェット機が就航可能となり、座席数・航続距離が増え、羽田便をはじめ、他の主要都市便も理論的には可能になります。
- ただし「安全区域の拡張」「費用対効果」「地形・周辺住民の反対」「年間利用者数の見込み」の難しさから、延長案は構想止まり。現時点では実現していません。
つまり、羽田便や他路線は“夢”ではあったものの、“現実の制約”によって頓挫した、というのが今の状況です。
✅ それでも但馬空港は“機能”し続ける — 伊丹便だけでも残される理由
- 但馬空港は「但馬・豊岡地域」と大阪圏を結ぶ唯一の空港。鉄道・バスだけではアクセスが難しい地域において、“短時間で移動できる”価値があります。特に急ぎの用事や雪・天候不良時など、鉄道より安定した移動手段として機能します。
- また、地域振興・観光(温泉地、城崎温泉など)との組み合わせ、行政の補助などによって、航空路線維持の補助構造が存在します。
- さらに、防災拠点・地域アクセス維持の面で、空港の存在意義が評価されており、単なる“儲け”では測れない価値があります。
言い換えれば、但馬空港は“多路線・多便 → 利益追求”型ではなく、“地域維持・利便確保・公共性重視”型の“ミニ空港モデル”として機能しているのです。
🔭 将来の展望と、可能性はゼロか?
可能性はある――ただしハードルは高い。以下のような条件が整えば、但馬に変化が起こるかもしれません。
- 滑走路延伸 → ジェット機運用可能に(ただし用地確保・安全区域整備が必要)
- 地域振興・観光資源の活性化 → 需要拡大
- 地方自治体や国の補助政策 → 継続的な支援と路線維持へのインセンティブ
- LCC や小型ジェットによる“地方空港再考”の流れ
実際、県や地元自治体は滑走路延長の構想を改めて検討しており、将来的な羽田便や国際便の可能性を完全に否定していません。
ただし、現実的には「多くの条件を満たす必要がある」ため、「いつか実現するか」は不透明です。
📝 まとめ:「但馬空港が伊丹便だけ」の理由と、そこにある意味
| 要素 | 理由/意味 |
|---|
| 滑走路 1,200 m | プロペラ機しか運用できず、ジェット機は無理 |
| 地域の需要規模 | 利用者数が少なく、多便・多路線での採算が合わない |
| 過去の延伸構想 | 滑走路延伸の構想あり → しかし地域・費用・採算の壁で未実現 |
| 公共性/地域アクセス | 鉄道・高速道が弱い地域のアクセス確保、防災拠点の役割 |
| 将来の可能性 | 滑走路延伸や地域振興で夢はあるが、ハードルは高い |
💡 終わりに — “ミニ空港”としての但馬空港に思いを馳せる
「空港=大都市と結ぶ国際線ターミナル」というイメージが強い現代において、
但馬空港のような“地方のミニ空港”は地味かもしれません。
しかし、滑走路1,200 m、プロペラ機で運行、便数少なめ――という条件のなかでも、
但馬の人々の命綱であり、移動手段であり、防災の拠点であり、地域観光の起点である――。
その“存在の意味”を考えると、この伊丹便しかないけれど、“なくてはならない”空港の姿が浮かんできます。
もしあなたが但馬エリアに行くなら、飛行機+路線バスやレンタカーでの移動も、旅の選択肢になるかもしれません。
将来、もし滑走路が延伸されて羽田便が実現したら――
そのときは “地方空港の逆襲” を目撃する機会になるでしょう。
Post date : 2025.12.09 13:49