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オーストラリアやニュージーランドからヨーロッパへ向かうルートは、地理的に「地球上で最も長い空の旅」の一つです。

特にロンドン(ヒースロー)は、両国にとって歴史的・文化的に非常に重要な目的地であり、「究極のフロンティア」として存在します。

今、カンタス航空(Qantas)とニュージーランド航空(Air New Zealand)の二大キャリアは、このロンドンをターゲットに、超長距離便(Ultra Long Haul / ULH)の展開に命を懸けています。

なぜ彼らは、ここまでしてロンドンを目指すのか?その背景には、単なるビジネスではない、地理的制約の克服ナショナルキャリアとしてのプライドが隠されています。


1.🦘 カンタス航空の狙い:「究極の直行便」で時間を制する

カンタス航空にとって、ロンドンへの直行便は長年の夢であり、「プロジェクト・サンライズ(Project Sunrise)」という名の国家プロジェクトに近い壮大な計画として進行しています。

① 究極の時間短縮とワンストップの排除

現在、シドニーやメルボルンからロンドンへ行くには、必ずアジア(シンガポールなど)や中東(ドバイなど)で最低1回以上の乗り継ぎが必要です。

  • カンタスの目標: シドニー/メルボルンとロンドン間を、乗り継ぎなしの約20時間で結ぶことです。
  • ビジネスメリット: 乗り継ぎや待ち時間を完全に排除することで、競合他社に対し「最も速い選択肢」という圧倒的な優位性を確立し、時間と快適性を求める高単価なビジネス客を独占できます。

② ナショナルキャリアとしての地位確立

カンタスは、第二次世界大戦後からシドニーとロンドンを結ぶ長距離路線を「カンガルー・ルート」と呼び、その運航を誇りとしてきました。この象徴的なルートを、歴史上初めて直行便で結ぶことは、カンタスが世界の航空界の「フライト・ルーラー(支配者)」であることを内外に示す行為なのです。


2. 🥝 ニュージーランド航空の狙い:地理的制約を克服した「接続の強化」

ニュージーランド航空(NZ)のロンドン戦略は、カンタスの「直行」とは少し異なります。彼らは、乗り継ぎ(ワンストップ)の利便性を極限まで高めることに注力しています。

① ニューヨーク経由でヨーロッパ市場に食い込む

ニュージーランドは地球上で最も孤立した国の一つです。オークランド(AKL)からロンドンへの直行便は、航続距離と天候の厳しさから技術的に極めて困難です。

  • NZの戦略: 既に運航を開始したオークランドとニューヨーク(JFK)を結ぶ超長距離便を活用し、ニューヨーク経由でロンドン(ヒースロー)へのアクセスを提供します。
  • ビジネスメリット: ニュージーランドからの旅客に、アジア・中東経由以外の「北米経由」という新たな選択肢を提供し、競合他社(特にアジア系キャリア)から旅客を奪います。

② ニュージーランド観光の促進

ヨーロッパからの旅行者にとって、北米最大のハブであるJFK経由でオークランドへ向かうルートは非常に魅力的です。ニュージーランド観光を促進し、ヨーロッパ市場からのインバウンド需要を取り込む上でも、ロンドンへの接続強化は不可欠なのです。


3. 💰 ULH成功の鍵を握る「機内空間」と「プレミアム需要」

超長距離便(ULH)は、単に飛ぶだけでなく、採算を取ることが極めて難しいビジネスです。カンタスとNZがロンドン路線で成功するには、以下の課題克服が不可欠です。

① プレミアム客の獲得

20時間近いフライトでは、エコノミークラスの単価では燃料費すら賄えません。成功の鍵は、ビジネスクラスやファーストクラスといった「プレミアム需要」の獲得にあります。

  • 機材の進化: カンタスはA350-1000ULR、NZはB787-9といった、長距離飛行が可能な燃費効率の良い機材を選定しています。
  • リラックス空間の提供: 乗客が長時間快適に過ごせるよう、機内にリラックスエリアや専用の仮眠スペースを設けるなど、「移動中の体験価値」を極限まで高める工夫が必要です。

② 燃料効率とペイロードの調整

ULHは、大量の燃料を積む必要があり、その分、運べるペイロード(貨物や乗客)が制限されます。両社は、最新鋭機材の導入と、高度な運航計画によって、この制約を乗り越えようとしています。


📝 まとめ:ロンドン直行は「距離への挑戦」

カンタスとニュージーランド航空がロンドンを目指すのは、単なる路線開拓ではありません。カンタスは**「最も速く、直行で」という究極の挑戦、ニュージーランド航空は「最も効率的で快適な接続で」**という地理的制約への挑戦です。

彼らの ULH への取り組みは、人類が長年抱えてきた「距離の壁」を打ち破り、世界をより小さく、より身近にするための壮大なフロンティアなのです。

Post date : 2025.12.14 11:39