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シンガポール航空(Singapore Airlines / SQ)が運航する、シンガポール(チャンギ)とニューヨーク(JFKまたはニューアーク)を結ぶ直行便は、現在、飛行距離で世界最長クラスの商業路線です。
18時間を超えるフライト時間は、まさに究極の空の旅と言えます。
なぜシンガポール航空は、これほどまでに長く、燃料費もかかる超長距離便(Ultra Long Haul / ULH)にこだわるのでしょうか?それは、単なる技術力の誇示ではなく、国家の生存戦略とビジネスの採算性が複雑に絡み合った、極めて合理的な選択だからです。
シンガポール航空のNY直行便の最大の目的は、シンガポールのチャンギ国際空港の競争力を世界最強にすることにあります。
アジアの多くの都市からニューヨークへ向かう際、従来はヨーロッパ(例:フランクフルト)や中東(例:ドバイ)を経由するワンストップのルートが主流でした。
チャンギ空港は、ドバイやカタール、そして韓国・仁川など、アジアと欧米を結ぶ巨大なハブ空港と常に激しい競争をしています。
このNY直行便は、競合が容易に真似できない**「乗り継ぎなし」のサービスを提供することで、特に高単価な利用客を囲い込み、チャンギ空港の地理的な優位性**を最大限に引き出すための切り札なのです。
これほど長いフライトで採算を取るには、エコノミークラスの乗客だけでは不可能です。SQは、この路線を**「高単価なプレミアム需要」**を獲得するための装置として位置づけています。
SQがこの路線を再開した際、エアバスA350-900ULR(超長距離型)を採用し、エコノミークラスをあえて廃止しました。
長時間フライトの快適性を極限まで高めることで、高い運賃を設定し、路線全体の収益性を担保しています。
実は、SQは2004年にもこの路線を開設しましたが、当時の機材(ボーイング777-200LR)では燃費効率が悪く、高値の燃料費に耐えられず、2013年に休止しました。
2018年の再開は、燃費効率が格段に向上したA350-900ULRという最新鋭機の登場によって初めて可能になったのです。技術革新が、ビジネス採算性の壁を打ち破った象徴的な例と言えます。
シンガポール航空のニューヨーク直行便は、
この三要素が完璧に融合した、未来の航空路線の象徴です。
単に長距離を飛ぶだけでなく、いかに効率よく、快適に、そして高い運賃を確保できるか——SQのNY便は、その挑戦の最前線を飛び続けているのです。
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