むるむる ブログ

主に旅について、それから色々

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海外旅行で鉄道を使ったことがある人なら、一度はこう思ったことがあるはずだ。

「なんで駅がこんなに分かれているんだ?」
「目的地を間違えたら、駅からやり直し?」

これは決して不親切だからではない。
ヨーロッパの都市は、東京とはまったく違う“鉄道思想”で作られているからだ。


モスクワ:国家の広さが生んだ「行先別ターミナル都市」

モスクワには、9つもの巨大ターミナル駅が存在する。
レニングラード駅、キエフ駅、カザン駅、ヤロスラヴリ駅……。

これらはすべて、行先別に完全に分かれている

  • 北へ行く列車はこの駅
  • 南西へ行く列車はあの駅
  • シベリア方面は別の駅

理由は明快だ。

ロシアは広すぎる。
列車は数千キロを走り、都市と都市を「点」で結ぶ。
ターミナルは「旅の始まりと終わり」であり、途中で混ざることを前提としていない

モスクワにとって鉄道とは、
都市交通ではなく、国家を束ねる動脈なのだ。


パリ:美しい都市計画が生んだ“分断された鉄道”

パリもまた、行先別ターミナル都市の代表例だ。

  • 北駅:イギリス・ベルギー方面
  • リヨン駅:南東フランス
  • モンパルナス駅:西フランス
  • 東駅:ドイツ方面

これらの駅は、互いに直通していない

なぜか。

理由は「歴史」と「美意識」だ。
19世紀、パリはすでに完成された都市だった。
その中心を線路で貫くことは許されなかった。

結果、鉄道は都市の縁で止まり、
ターミナル駅は“都市の壁”になった。

人は地下鉄で移動し、
鉄道は「都市と都市を結ぶ存在」に徹した。


ロンドン:鉄道発祥国ゆえの“終着駅の群れ”

ロンドンも一見すると東京に似ている。

  • キングス・クロス
  • ユーストン
  • パディントン
  • ウォータールー
  • ヴィクトリア

だが、決定的に違う点がある。

これらは“結ばれることを想定していない”

イギリスでは、鉄道は早く生まれすぎた。
路線ごとに会社が違い、
それぞれが自分の終着駅を作った。

結果、ロンドンには
「巨大な終着駅が点在する都市」が生まれた。


そして東京:ヨーロッパ型を“否定”した都市

では東京はどうか。

東京にも、確かに方面別ターミナルは存在する。

  • 上野:北
  • 新宿:西
  • 品川:南
  • 池袋:北西

しかし東京は、
それらを“終着駅”として扱わなかった。


山手線という革命

東京最大の異質さは、これに尽きる。

すべてのターミナルを1本の環状線で結んだこと。

ヨーロッパでは、

  • 終着駅は都市の端
  • 都市内を貫通させない

東京では、

  • 終着駅を「途中駅」に変えた
  • すべてを“移動の途中”に組み込んだ

これは思想の逆転だ。


新幹線が象徴する東京の哲学

新幹線は、東京駅に集約されている。

  • 東海道
  • 東北
  • 上越
  • 北陸

ヨーロッパなら、
「方面別に駅を分ける」のが自然だ。

だが東京は、
速く、重要な列車ほど“集める”

なぜか。

目的は「旅」ではない。
日常の移動、乗り換え、流動性だ。


結論:東京は“都市鉄道の最終進化形”

モスクワは、国家を束ねるために分けた。
パリは、都市を守るために分けた。
ロンドンは、歴史のまま分けられた。

東京は違う。

分かれていたものを、つなぎ続けた都市だ。

  • 終着駅を否定し
  • 都市を貫き
  • 鉄道を“生活インフラ”に昇華させた

だから東京の駅は迷路になる。
だから東京の鉄道は異常に便利になる。

東京は、
ヨーロッパ型ターミナルを否定することで、
世界で最も鉄道に適応した都市になった。

Post date : 2025.12.15 15:17