むるむる ブログ

主に旅について、それから色々

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「ホンダが飛行機を作っている」

初めて聞いたとき、多くの人はこう思います。
「え? なんで?」と。

トヨタでも日産でもない。
ましてや三菱のように航空機の系譜を持つ会社でもない。

それでもホンダは、
HondaJetという世界的に評価されるビジネスジェットを生み出しました。

なぜホンダは空を飛んだのか。
そこには、ホンダという会社の“思想そのもの”がありました。


クルマ会社でも、バイク会社でもない

ホンダは「エンジンの会社」だった

ホンダを理解するうえで、最初に押さえるべき点があります。

ホンダは創業当初から一貫して、

「移動手段の会社」ではなく、「動力の会社」

だった、という事実です。

  • 自転車用補助エンジン
  • バイク
  • クルマ
  • 船外機
  • 発電機
  • 芝刈り機
  • 除雪機

すべてに共通するのは、
小さくて、高性能で、信頼性の高いエンジン

つまりホンダにとって、
「飛行機」は異業種ではなく、延長線上だったのです。


なぜ「完成機」まで作ったのか?

実はホンダは、
最初から飛行機を売るつもりはありませんでした。

当初の狙いは、

  • 小型ジェット用エンジンの開発
  • 航空分野で通用するエンジン技術の確立

しかし、ある問題に直面します。

「いいエンジンを作っても、それを活かす機体が存在しない」

そこでホンダは考えました。

「だったら、機体も自分たちで作ろう」

ここが、いかにもホンダです。


HondaJetの最大の特徴

「非常識な配置」が生んだ合理性

HondaJetが航空業界で注目された理由は、明確です。

主翼上面エンジン配置(OTWEM)

  • エンジンを胴体後部ではなく、主翼の上に載せる
  • 空気抵抗を減らし
  • 客室を広くし
  • 燃費を改善する

これは長年「やってはいけない」とされてきた配置でした。

しかしホンダは、

  • CFD(数値流体解析)
  • 風洞実験
  • エンジンと機体を一体で設計

という、自動車メーカー的なアプローチで壁を突破します。

結果、

  • 同クラス最速
  • 同クラス最高燃費
  • 同クラス最大キャビン

という、極めて現実的な価値を生み出しました。


なぜビジネスジェットだったのか?

ここも重要なポイントです。

ホンダは最初から、

  • 大型旅客機
  • 国産ジェット旅客機

を狙っていません。

理由は単純です。

  • 認証コストが異常に高い
  • 開発期間が長すぎる
  • 既存メーカーが強すぎる

一方、小型ビジネスジェットは、

  • 技術で勝負できる余地がある
  • 少量生産でも成立する
  • ブランド力が直接評価される

つまり、

「ホンダが勝てる土俵」

だったのです。


FAA認証を“自力で”取った意味

HondaJetは、

  • 設計
  • 製造
  • 試験
  • 認証対応

すべてをホンダ主体で行っています。

これは日本企業として極めて異例です。

三菱スペースジェットが苦しんだFAA認証を、
ホンダは静かに、しかし確実に突破しました。

理由は明確です。

  • 最初からFAA基準を前提に設計
  • 「後付け対応」をしなかった
  • 小さな機体で、管理可能な規模だった

“背伸びをしなかった”ことが、最大の成功要因でした。


ホンダは「空の覇権」を狙っていない

重要なのはここです。

ホンダは、

  • ボーイングになろうとしていない
  • エアバスと戦おうとしていない

狙っているのは、

「ホンダらしい移動の最適解」

  • 小さく
  • 賢く
  • 無理をせず
  • しかし世界一を取る

この思想は、バイクでもクルマでも、そして飛行機でも変わりません。


まとめ

ホンダが飛行機を作った“本当の理由”

ホンダが航空機を作った理由を、一言で言うなら。

「できるから作った」
ただそれだけであり、それこそがホンダの強さ

クルマメーカーだから飛ばないのではない。
航空機メーカーじゃないから無理なのでもない。

技術と思想があれば、空にも道はある。

HondaJetは、その証明なのです。

Post date : 2025.12.20 22:51