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日本航空の機材戦略、その静かな転換点

「JALがついにエアバスを本格採用した」
A350-900の導入は、航空ファンだけでなく業界関係者にも少なからぬ驚きを与えました。

しかし、この出来事は
「ボーイング一筋のJALが心変わりした」
という単純な物語ではありません。

実際には、
JALの経営環境・技術要求・認証と運航の現実が積み重なった結果
として、A350は極めて合理的な選択だったのです。


JALは本当に「ボーイング一筋」だったのか?

まず、ここを正確に整理しておきましょう。

■ JAL本体の主力機材の実像

JALは長年にわたり、

  • B747(国内線・国際線)
  • B767
  • B777
  • B737

といった ボーイング機を主軸に機材戦略を組み立ててきた航空会社 です。

この点は事実です。

一方で、

  • A300:旧JASが導入 → 経営統合後にJALが引き継いだもの
  • LCC(ZIPAIR等)や関連会社の機材:JAL本体の機材選定とは別枠

これらをもって
「JALは昔からエアバスも使っていた」
とカウントするのは、適切ではありません。

👉 JALが“自ら選定し、主力として長期運用する機材”としてエアバスを選んだのは、A350が初めて
この点が重要です。


A350導入は「路線戦略の転換」ではない

次に誤解されやすい点があります。

A350導入は、
「JALが欧州志向に転換した」
「ボーイングと決別した」
という話ではありません。

■ 対象はあくまで「国内幹線」

JALのA350-900は、

  • 羽田~新千歳
  • 羽田~那覇
  • 羽田~福岡 など

国内の高需要幹線 を主戦場としています。

つまりこれは、

国際線戦略ではなく
国内線フリート更新の話

なのです。


なぜB787や777の後継ではダメだったのか?

では、なぜ従来通りボーイングで更新しなかったのでしょうか。

■ B777の問題

  • 機体が大きすぎる
  • 燃費・整備コストが時代に合わない
  • 1路線あたりの需要変動に弱い

■ B787の問題

  • 機体サイズが中途半端
  • 国内線高密度仕様には最適とは言い難い
  • 座席数・回転率でA350に劣る

JALが求めていたのは、

  • 大型すぎず
  • 高密度運航が可能
  • 長期的に国内線で使い倒せる機材

でした。


A350が「国内線最適解」だった理由

A350は、国際線用の最新鋭機というイメージが強いですが、
JALが評価したのは、むしろ以下の点です。

■ ① 構造と耐久性

  • 炭素繊維複合材主体
  • 与圧サイクルに強く、国内線多頻度運航に向く

■ ② 燃費と航続距離の余裕

  • 必要以上に長距離性能を持つことで、エンジン負荷が低い
  • 結果として 整備間隔が延び、運航コストが安定

■ ③ 客室品質の向上

  • 静粛性
  • 湿度・気圧の改善
  • JALが重視する「サービス品質」を底上げできる

「FAA認証問題」との距離感

三菱スペースジェットの失敗を見て、
「日本は認証が取れないから完成機を諦めた」
という声もあります。

しかしJALの視点はもっと現実的です。

  • 既に世界で認証・運用実績のある機材
  • 認証リスクを自社で負わない
  • 確実に使えるものを選ぶ

A350は、その条件を満たしていました。


JALはボーイングを捨てたのか?

答えは NO です。

  • 国際線:B787は引き続き主力
  • 小型機:B737系を維持
  • A350:国内線幹線の中核

👉 JALは“脱ボーイング”ではなく、“最適配置”を選んだ

それだけの話なのです。


A350導入が示す、JALの本当の変化

この決断が象徴しているのは、

機材思想の転換ではなく
「経営判断の成熟」

と言えるでしょう。

  • イデオロギーではなく合理性
  • 過去の系譜ではなく将来の運航
  • 国産への期待ではなく確実性

JALは、
「航空会社として生き残るための最適解」を選んだ
その結果が、A350だったのです。

Post date : 2026.01.12 22:17