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進捗・他都市の挑戦・そして日本の観光戦略の岐路

「大阪にカジノができる」――
日本でそんな話題が盛り上がり始めたのは、もう10年以上前のことでした。
2018年にカジノを含む統合型リゾート(IR)の法制度が整備され、
多数の都市が誘致の意向を示し、
「東京」「横浜」「大阪」などが競い合う構図にまでなりました。

しかし2026年現在、正式に国が認可したIR候補地は大阪だけ
そしてその開業予定は、なんと 2030年。
この遅れ具合は、旅行者としては率直に「遅すぎる」と感じても不思議ではありません。


■ そもそも大阪IRはどうなっているのか?

大阪の統合型リゾート計画は、
大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)を舞台に進んでいます。
カジノに加えてホテル、展示場、国際会議場、ショッピング・エンタメ施設などが一体化した施設で、
総投資額は約1兆3,000億〜1兆5,000億円規模と巨大です。

具体的には、

  • MGMリゾーツ(米国)+オリックスが中心に開発
  • 施設全体は770,000㎡以上
  • 年間約2,000万人の集客を見込む
  • 国内外からの旅行需要を強く狙う

という計画で、2030年秋頃の開業を目指して建設が進行中です。

着工は2025年、土台工事は進んでおり、地盤改良のコスト低減なども確認されています。

ただし、元々言われていた2029年開業計画は事実上破棄されており、
大阪府知事自身も「2030年開業が現実的」と述べています。


■ なぜこんなに時間がかかるのか?

単純に建設が遅いわけではありません。
日本のIRは、法制度の整備 → 計画提出 → 審査 → 認可 → 建設
というプロセスを踏んでおり、各段階で時間がかかっています。

主な理由は:

✔ 厳密な法制度と安全基準

日本はカジノ導入に慎重だった歴史があり、
依存症対策・治安対策・規制設計が世界でも厳しいと言われています。これは、合法化の段階で何度も政策的議論を呼びました。

✔ 地方自治体の慎重姿勢

大阪以外の候補地では住民合意や計画精査が足踏みしています。
一度計画が動いた地域でも、その後方針転換した例もあります。

✔ 国の審査体制と公募時期のズレ

大阪認可後、残り2地域のライセンスが空いているにもかかわらず、
次の応募公募は2027年から(約6ヶ月間)予定というニュースが出ており、全国展開にはまだ時間がかかりそうです。


■ 他の都市はどう動いているのか?

🟠 東京(江戸・お台場エリアなど)

東京都は歴史的に誘致意向がありましたが、明確な計画提出には至っていません。
かつて候補地として検討されていた臨海部エリアなどについて検討報告はあるものの、IR誘致を正式な計画として進める公式発表はまだです。

🟡 横浜(山下ふ頭)

横浜は2019年頃に積極的な誘致表明をしましたが、政治・財政面での論争や企画精査の結果、現時点ではまだ実施計画の提出には至っていません。

🔵 福岡(博多・北九州)

福岡は全国的な調査段階で「誘致を検討中」と回答した自治体には含まれていましたが、他の大都市より進捗は緩やかです。

🟢 和歌山(和歌山市)

和歌山も過去に誘致検討が伝えられていますが、正式計画として動き出すには至っていません。


■ 観光戦略としてのIRはどう評価できるか?

カジノを含む統合型リゾートは単なるギャンブル施設ではありません。
世界の先行例を見ると、たとえばシンガポールでは IR開業後に観光収入が大幅拡大し、雇用創出にも寄与している事例があります。

大阪IRの試算でも、

  • 15,000人以上の就業
  • 年間数十億円規模の税収
  • 関西への滞在観光客増

といった経済効果が期待されています。

さらに大阪は2025年万博跡地を活用することで、観光とIRをセットにした長期滞在戦略を描いています。


■ まだこれから始まる「全国展開」

大阪だけではありません。
法令上は最大3地域までIRを設置できますが、残り2地域はこれから選定されます。
そのため、地方自治体は公募開始(予定:2027年5月〜11月)に向け、計画策定を進める必要があります。

候補として今名前が上がるのは:

  • 北海道(苫小牧地区など)
  • 和歌山県
  • 長崎県

などです。


■ 本当に遅すぎるのか?

率直に言えば、日本のIR計画は世界的に見ても遅い。
法制度化自体は2016〜2018年と歴史がありますが、
それでも 他国のIR開発競争からは後追いになっています。

理由は、日本が慎重主義をとっていることもありますが、

観光+カジノ=社会的議論を要するテーマ

という性質上、政治的・社会的調整が必須だからです。
そのため、簡単に早期開業に踏み切れない面もあります。


■ 将来展望:2030年以降の日本観光変革

とはいえ、一度大阪IRが開業すれば、

  • 国内最大クラスの観光滞在拠点
  • 国際MICE観光拡大の起爆剤
  • アジア観光ハブとしての地位向上

といった用途が期待されています。

そして2030年代後半に向けて、
残り2地域が認可されれば、
日本は大都市複数拠点型の観光戦略へ移行する可能性があります。


■ まとめ:遅いけど“動き始めた”

  • 大阪IRは2025年に着工、2030年開業予定で着実に進行中。
  • 東京・横浜・福岡・和歌山は検討段階だがまだ申請を提出していない。
  • 次の公募は2027年で、地方自治体の動きが鍵。
  • 世界の他国に比べて遅れはあるものの、慎重な制度設計の結果とも言える。
  • 成功すれば、日本の観光戦略は2030年代に大きく変わる可能性がある。

🔎 結論(ブログ向けまとめ)

「遅すぎる」と思っても正解だ。
しかし、それは日本の観光戦略が“政治的プロセス”を経ているからであり、
一度動き出せば、2030年代に向けた観光革命になる可能性がある。

大阪だけでなく、次の候補地がどこになるか――
ここが観光・都市戦略の最大の論点だ。

Post date : 2026.02.22 15:31