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コンコルド退役以来、世界の空から姿を消していた超音速旅客機。

その歴史を塗り替えるべく、アメリカのブーム・スーパーソニック(Boom Supersonic)社が開発を進めているのが、次世代超音速機**「Overture(オーバーチュア)」**です。

Overtureは、東京ーロサンゼルス間を現在の約半分、約6時間で結ぶことを目指しており、日本航空(JAL)も導入を検討していることから、私たちにとって非常に身近な存在になりつつあります。

しかし、日本でOvertureがコンコルドのように空を飛び回るためには、いくつかの大きな壁があります。今回は、Overtureの展望と、日本での就航の可能性を分析します!


1. 🛫 Overtureが描く「超音速の再来」

Overtureは、単に速さを追求したコンコルドの再来ではありません。技術革新により、現代の課題を克服することを目指しています。

① 目標性能と革新性

  • 速度: 目標マッハ1.7(約2,080km/h)。東京ーサンフランシスコ間が約5時間半に短縮される見込みです。
  • 環境配慮: 持続可能な航空燃料(SAF)の使用を前提としており、カーボンニュートラルを目指すことで、コンコルド時代にはなかった環境意識に対応しようとしています。
  • 搭乗者数: 約65~80席と、コンコルドよりも効率的なサイズ設定となっています。

② 日本航空(JAL)の参画

Overtureはすでにユナイテッド航空やアメリカン航空などから受注を得ていますが、日本でもJALが先行発注(オプション)を検討しています。これは、「時間価値」を重視する日本の航空需要が極めて高いことを示しています。


2. 🚨 就航の最大の壁:「ソニックブーム」の規制

Overtureが日本で自由に超音速飛行を行うための最大の障害は、技術的な問題ではなく、法規制にあります。

① 衝撃波(ソニックブーム)の問題

航空機が音速(マッハ1)を超えると、機体から強力な衝撃波が発生し、地上に大きな爆発音となって届きます。これが**「ソニックブーム」**です。

  • 規制: 日本国内では、騒音被害を防ぐため、陸上での超音速飛行は法律で厳しく禁止されています。これはアメリカなど多くの国でも同様です。

② 日本国内での超音速飛行は不可能

この規制がある限り、Overtureが東京や大阪の上空でマッハ1.7を出すことはできません。日本の空港に離着陸する際は、通常の旅客機と同様に亜音速(マッハ1未満)で運行する必要があります。


3. ✈️ Overtureが日本で担う「限定的な役割」と可能性

では、Overtureは日本で飛び立っても、意味がないのでしょうか?答えは「NO」です。その役割は、洋上での飛行にあります。

① 太平洋・洋上での超音速巡航

Overtureの最大の価値は、太平洋などの洋上に出た後に発揮されます。ソニックブームが地上に届く心配がない洋上では、マッハ1.7での飛行が許可される見込みです。

  • 東京ー米国路線の劇的な短縮: 東京ー米国西海岸のフライトは、離着陸時の亜音速飛行を含めても、往復で約8時間以上の短縮が見込まれます。これは、ビジネスや短期旅行の可能性を大きく広げます。
  • アジア域内での活用: マッハ1.7の巡航が難しいアジア域内でも、高速巡航モードを活用することで、移動時間を短縮できる可能性があります。

② 静かな「超音速旅客機」を目指して

ブーム社は、着陸時の騒音についてもコンコルドよりも抑える設計を追求しています。日本の主要空港への就航は、着陸時の騒音が現在の規制値をクリアできるかが、重要な条件となります。


4. 📝 まとめ:Overtureは「時間」の価値を変える

Overtureは、日本の空で自由に飛び回ることはできませんが、国際線において**「時間」の概念を根底から変える可能性**を秘めています。

このプロジェクトの成功は、単に速さの競争ではなく、環境規制や騒音問題といった現代の課題をどこまで克服できるかにかかっています。Overtureが日本の空港に降り立つ日は、間違いなく私たちの旅のあり方を一変させるでしょう。

Post date : 2025.12.01 22:12