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A-trainとは何か?メーカーごとの「思想」を読み解く

私たちは普段、何気なく電車に乗っています。
しかしその裏側では、メーカーごとにまったく異なる設計思想が存在します。

「どの部品を共通化するか」
「軽さを優先するのか、頑丈さを取るのか」
「鉄道会社の要望にどこまで合わせるのか」

この記事では、
A-trainを代表例に、日本の鉄道車両メーカーの設計思想と特徴を整理してみます。


鉄道車両は「一品モノ」だった

かつての日本の鉄道車両は、典型的なオーダーメイドでした。

  • 路線ごとに仕様が違う
  • 鉄道会社ごとに設計が違う
  • 同じ形式でも細部が違う

結果として、

  • 設計コストが高い
  • 製造期間が長い
  • 海外展開が難しい

という問題を抱えていました。

ここに風穴を開けたのが、日立製作所のA-train構想です。


A-trainとは何か?(日立製作所)

A-train = Advanced Train Integration

A-trainは、

「車両を“システム商品”として設計・生産する」

という思想です。

特徴①:モジュール化

  • 車体
  • 台車
  • 主電動機
  • 制御装置
  • 空調
  • 内装

これらを標準化されたモジュールとして組み合わせます。

👉 レゴブロックのような発想


特徴②:アルミダブルスキン車体

  • 軽量
  • 高剛性
  • 腐食に強い
  • メンテナンス性が高い

これは後の海外案件(イギリス・アメリカ)で大きな武器になります。


特徴③:海外市場を見据えた設計

A-trainは最初から、

  • 日本国内
  • 欧州
  • 北米

すべてを視野に入れた設計思想

👉 これが、
**イギリスが「鉄道発祥国なのに日立を採用した理由」**にもつながります。


日立製作所:システムエンジニア型メーカー

日立の特徴

  • 車両単体ではなく「鉄道システム全体」を売る
  • 信号
  • 電力
  • 保守
  • IT

👉 鉄道インフラ丸ごと請け負う会社

そのため設計思想も、

  • 保守しやすい
  • 長寿命
  • 国際規格対応

が強く意識されています。


川崎重工業:堅牢・実績重視型

川崎重工は、

  • 日本の在来線
  • 新幹線
  • 北米向け地下鉄・通勤電車

で圧倒的な実績があります。

特徴

  • ステンレス車体が得意
  • とにかく頑丈
  • 長寿命
  • 保守性重視

👉 「壊れない」「雑に扱われても動く」

アメリカ市場で評価される理由です。


日本車輌製造:JR東海の思想を色濃く反映

日本車輌は、

  • 新幹線(N700系など)
  • 在来線
  • 名鉄車両

などを手がけています。

特徴

  • 安定志向
  • 実績主義
  • JR東海の保守哲学と親和性が高い

👉 「冒険しないが失敗しない」設計


東急車輛(現・総合車両製作所):実用主義

  • ステンレス車体のパイオニア
  • 私鉄向け車両に強い

特徴

  • 実用性重視
  • コストと性能のバランス
  • 大量生産向き

👉 首都圏私鉄に多い理由です。


ヨーロッパメーカーとの違い

ヨーロッパ(シーメンス、アルストム等)

  • 標準規格が先
  • 車両は「規格製品」

日本

  • 事業者ごとの最適化
  • 運行条件に極端に合わせる

👉 A-trainは、
日本型設計から世界標準へ踏み出した象徴とも言えます。


なぜ鉄道車両設計はここまで思想が分かれるのか?

理由はシンプルです。

  • 鉄道は国の歴史
  • 運行条件
  • 労働文化
  • 事故への考え方

すべてが設計に反映されるから。


まとめ

鉄道車両は「走る哲学書」

  • A-trainは「世界と戦うための日本の答え」
  • 川崎は「タフさ」
  • 日本車輌は「安定」
  • 東急系は「実用」

同じ電車でも、
設計思想を知ると見え方がまったく変わります。

次に駅で電車を待つとき、
ぜひ「この車両、どんな思想で作られたんだろう?」と考えてみてください。

それだけで、鉄道はもっと面白くなります。

Post date : 2025.12.22 00:18