むるむる ブログ

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「なぜ、わざわざ海の上に新空港を作ったのか?」

香港国際空港(チェクラップコク空港 / HKG)は、
1998年、香港返還の翌年に開港しました。

それまで香港の玄関口だったのは、
あまりにも有名な啓徳空港(Kai Tak)です。

・市街地ど真ん中
・着陸時は高層ビルすれすれ
・騒音問題が限界
・滑走路は実質1本

すでに90年代には、
アジア有数の航空ハブとして完全にキャパオーバーでした。

そこで香港政府(当時は英領香港)は、

「返還後も国際金融・物流・航空の中心で生き残る」

という明確な意思のもと、
“場所を丸ごと作る”新空港計画に踏み切ります。

これが
ランタオ島沖を埋め立てて建設されたチェクラップコク空港です。


空港建設は「空港単体」ではなかった

この空港、単に滑走路を作っただけではありません。

同時に進められたのが、いわゆる

✈「ポート・アンド・エアポート・デベロップメント戦略」

  • 空港島と市街地を結ぶ青馬大橋
  • 空港鉄道(エアポート・エクスプレス)
  • 新市街・物流拠点
  • 港湾・コンテナターミナルとの連携

つまり、

✨ 空港を「都市・物流・経済インフラの核」にする構想

これは、
後のチャンギ空港や仁川空港にも通じる思想ですが、
90年代としては非常に先進的でした。


では、近隣の空港とはどう住み分けているのか?

珠江デルタには、実は空港が密集しています。

  • 香港(HKG)
  • 深圳(SZX)
  • 広州(CAN)
  • マカオ(MFM)
  • 珠海(ZUH)

一見すると「多すぎでは?」と思いますが…

実は、役割分担はかなり明確です。

✈ 香港国際空港(HKG)

  • 国際線ハブ
  • 長距離国際線
  • 高付加価値貨物
  • 乗り継ぎ需要

✈ 深圳・広州

  • 中国国内線の巨大拠点
  • 中国系航空会社の本拠地
  • LCC・国内乗り継ぎ

✈ マカオ

  • カジノ・観光特化
  • 近距離国際線

つまり香港は、

「中国に属しながら、中国の国内航空網には組み込まれない」
という、非常に特殊な立ち位置を保っています。

これが、今も香港空港が国際線で強い理由です。


キャセイパシフィックはどうなったのか?

香港といえば、キャセイパシフィック航空

・1946年創業
・香港を代表するフラッグキャリア
・かつては「世界最高峰の航空会社」の一角

しかし近年は順風満帆とは言えません。

  • 中国返還後の政治環境の変化
  • コロナ禍での長期運休
  • パイロット・人材流出
  • 中国系航空会社との競争激化

一時は経営危機に陥りましたが、
現在は香港政府・中国系資本の支援を受け再建しています。

一方で、

  • 香港エクスプレス(LCC)
  • 中国本土系航空会社の乗り入れ増加

など、
空港内の勢力図は確実に変わりつつあるのが実情です。


返還後の香港空港運営は「成功だったのか?」

結論から言えば、

インフラとしては大成功、政治的には微妙

と言えるでしょう。

成功した点

  • 世界トップクラスの貨物取扱量
  • 24時間運用可能
  • 3本目滑走路の建設(拡張余地あり)
  • 空港運営の効率性・評価は依然高い

不安要素

  • 香港の国際金融都市としての地位低下
  • 自由な人・モノの流れへの制約
  • 中国本土空港との競争激化

それでもなお、

「香港が香港であるための最後の砦」

として、
この空港が持つ意味は非常に大きいのです。


なぜチェクラップコク空港は「空港好きが見るべき空港」なのか

この空港は、

  • 植民地時代の遺産
  • 中国返還を見据えた戦略
  • 国際都市としての意地
  • アジア航空競争の最前線

これらすべてが一つの空港に凝縮されています。

ただの巨大空港ではありません。

「国家と都市の運命を背負って作られた空港」

それが、
香港・チェクラップコク空港なのです。

Post date : 2025.12.24 16:20