むるむる ブログ

主に旅について、それから色々

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――次に目指すべきは「中国依存からの脱却」ではなく「観光の再定義」だ

かつて「爆買い」という言葉が日本を席巻した。
都市部の百貨店、ドラッグストア、空港免税店――日本のインバウンド観光は、中国人観光客を前提に最適化されていった。

しかし、コロナ禍とその後の国際情勢の変化により、その前提は崩れた。
「中国人が戻らない」「戻っても以前のようではない」
そうした声が、観光地や空港、小売の現場から聞こえてくる。

では、日本の観光は失速したのだろうか。
答えはNOだ。
むしろ今、日本は「本来進むべき観光立国」の入口に立っている。


1. なぜ日本の観光は「中国依存」になったのか

まず冷静に、過去を振り返る必要がある。

中国人観光客は「都合が良すぎた」

  • 距離が近い
  • 人数が圧倒的に多い
  • 団体旅行が中心
  • 買い物単価が高い
  • 季節変動が少ない

観光地にとって、中国人観光客は短期間で数字を作れる存在だった。
結果として、日本の観光政策は「人数×消費額」を最優先する方向へ傾いていった。

しかしその代償として、

  • 観光地の画一化
  • 都市部集中
  • 地方観光の形骸化
  • 「日本らしさ」の消耗
    が進んでいったのも事実だ。

2. 中国人が減った今、何が起きているのか

中国人観光客が減ったことで、確かに打撃を受けた業種はある。
特に、

  • 団体向け土産物
  • 大型免税店
  • 都市部の大量消費型観光
    は厳しい。

一方で、別の変化も同時に起きている

欧米・豪州・東南アジアからの個人旅行客は増加

  • 滞在日数が長い
  • 地方へ足を伸ばす
  • 体験型消費が中心
  • 日本文化への関心が高い

つまり、日本の観光は

「人数ビジネス」から「価値ビジネス」へ
静かにシフトし始めている。


3. 中国に依存しない観光立国とは何か?

ここで重要なのは、「中国を排除する」ことではない。
目指すべきは依存しない構造だ。

キーワードは「分散・多様・深度」

① 国籍の分散

  • 欧米
  • 豪州
  • ASEAN
  • 中東
  • インド
    特定の国に偏らない集客構造を作る。

② 地域の分散

  • 東京・大阪・京都だけに頼らない
  • 地方空港、地方鉄道、地方港湾を生かす
  • 二次交通の整備が鍵

③ 消費の深度化

  • 買い物 → 体験
  • 観光地 → 生活圏
  • 有名 → ローカル

4. 次に日本が狙うべき「観光ターゲット」

中国依存から抜けた日本が、本気で狙うべき層は明確だ。

● 欧米の富裕層・知的旅行者

  • 歴史
  • 建築
  • 食文化
  • 鉄道・工業遺産
  • 地方の暮らし

日本人にとって「当たり前」のものが、彼らには唯一無二に映る。

● 長期滞在・リピーター

  • ワーケーション
  • 学習型観光
  • 季節を変えて何度も訪れる層

● 日本文化の“深掘り層”

  • 温泉
  • 地方祭り
  • 農業・漁業体験
  • 路線バス・ローカル線

5. 日本人が気づいていない「最強の観光資源」

実は、日本にはすでに答えがある。

それは、

「不便さ」「静けさ」「日常」

  • 時刻表通りに来るローカル列車
  • 何もない漁村の朝
  • 無人駅
  • 商店街の定食屋
  • 温泉地の湯治文化

これらは、世界的に見ると異常なほどの高品質体験だ。


6. 観光立国の成否を分けるのは「発想」

中国人が戻らないことを「危機」と捉えるか、
「構造転換の好機」と捉えるか。

答えは明らかだ。

日本は、

  • 数で勝つ国ではない
  • 派手さで勝つ国でもない
  • だが「積み重ね」で勝てる国だ

まとめ

中国に依存しない観光立国とは、「日本を安売りしない観光立国」

中国人観光客が減った今、日本はようやく問われている。

日本は、何を見せたい国なのか?

答えはもう、私たちの足元にある。

「中国人が居なくなった観光日本」は、
終わりではない。再設計の始まりだ。

Post date : 2025.12.25 15:25