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南海フェリーが、なくなります。
2026年3月30日、南海電気鉄道は子会社・南海フェリーが運航する和歌山港〜徳島港間のフェリー航路から2028年3月末をめどに撤退することを正式発表しました。前身の南海汽船の時代から数えれば約70年、本州と四国を結んできた航路の終わりが、正式に決まった瞬間でした。
そして7月22日、追い打ちをかけるようなニュースが届きました。南海フェリーが運航便数の減便を発表したのです。撤退発表からわずか4ヶ月。船の状態や乗客数を考えれば、想定の範囲内とも言えますが、「終わり」がじわじわと近づいてきている感触があります。
そんな今だからこそ、乗っておきたかった。今回の旅の出発便として、南海フェリーに乗ってきました。その様子を動画にまとめています。
なんば駅9:10発の特急サザン9号(和歌山港行)に乗り込みます。南海フェリーの接続便として設定されたこの列車は、和歌山市駅からさらに和歌山港線に直通し、終点の和歌山港駅まで運んでくれます。駅と港が連絡通路で直結しているため、改札を出てそのまま乗船手続きへ。この動線の良さは、南海フェリーの使いやすさのひとつです。
「好きっぷ」(なんば〜徳島港、2,500円)を使えば、この特急サザンとフェリーがセットでお得に利用できます。普通に乗車券+フェリー料金を別々に買うより大幅に安い。廃止前に使っておきたいきっぷのひとつです。
南海フェリーが運航するのは「フェリーあい」と「フェリーかつらぎ」の2隻。
| 船名 | 就航年 | 総トン数 |
|---|---|---|
| フェリーあい | 2019年 | 約2,825トン |
| フェリーかつらぎ | 1999年 | 約2,825トン |
「あい」と「かつらぎ」はどちらも2,825トンの姉妹船で、8tトラックも積載できる旅客フェリーです。フェリーあいは2019年就航の比較的新しい船ですが、フェリーかつらぎは1999年就航と、すでに四半世紀以上走り続けています。撤退の決定打のひとつとなったのが、このかつらぎの老朽化と新造船費用の問題でもありました。
和歌山港を出港し、紀淡海峡を渡って徳島港へ。所要時間は約2時間15分。この「中途半端な長さ」が南海フェリーの宿命でもあります。移動手段としては遅く、船旅として楽しむには少し短い。でも今となっては、その2時間15分が愛おしい。
船内には椅子席とカーペット席があり、ドライバー用の専用室も設けられています。椅子席はごく普通のフェリーらしい造りで、カーペット席はごろ寝もできるくつろいだスペースです。2時間ちょっとの乗船なら、カーペット席でゆったり過ごすのが個人的にはおすすめ。
売店もあります。南海フェリー名物のカップ麺や飲み物、お土産品など。船旅気分を高めてくれる、ささやかな船内サービスです。
天気が良ければ、ぜひ甲板へ出てください。A甲板船尾のオープンデッキに椅子席、さらに上の航海船橋甲板には展望デッキがあります。潮風を浴びながら眺める紀淡海峡の景色は、陸路では絶対に味わえないものです。友ヶ島や淡路島が見え、晴れた日には遠く明石海峡大橋も視界に入ります。
徳島港が近づくと、徳島南部道に架かる新町川橋をくぐって入港します。川を遡るように港に入っていく感覚は、フェリーならではの体験です。
廃止の理由は複合的です。
1998年の明石海峡大橋開通が最大の転換点でした。それまで年間97万人いた利用者が、橋の開通とともに激減。神戸経由の高速バスや自家用車に旅客を奪われ、2024年度の利用者はピーク比で約35万人にまで落ち込みました。
さらに燃料費の高騰、コロナ禍の打撃、そして老朽化した「フェリーかつらぎ」の更新問題。新造船には数十億円の費用がかかりますが、債務超過が続く経営状態では自力調達が困難でした。和歌山・徳島の両県市への支援申し入れも、最終的に折り合いがつかず撤退を決断。そして今年7月には減便まで発表されました。
70年の航路が、静かに終わりへ向かっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 航路 | 和歌山港〜徳島港(61km) |
| 所要時間 | 約2時間15〜20分 |
| 運航本数 | 減便中・要最新確認 |
| 徒歩旅客運賃 | 大人2,500円(燃油サーチャージ別途の場合あり) |
| 好きっぷ | なんば〜徳島港 2,500円(南海電車+フェリーセット) |
| スマート好きっぷ | VISAカードのタッチ決済で利用可能 |
| 撤退予定 | 2028年3月末をめど |
下灘駅のポスターが「思わず降りてしまう、という経験をしたことがありますか。」と問いかけたように、南海フェリーにも「思わず乗りたくなる」何かがあります。
速くはない。安くもない(好きっぷを使えばお得ですが)。明石海峡大橋を渡れば同じ区間をもっと速く移動できます。
それでも、甲板に出て潮風を浴びる2時間15分は、代替が効かない体験です。橋は「移動の手段」であり、船は「旅の舞台」でもある。その違いを、南海フェリーは70年間、乗り続けてきました。
2028年3月まで、まだ時間はあります。「好きっぷ」を買って、特急サザンに乗って、甲板に出て紀淡海峡の風に吹かれてみてください。なくなってから後悔する前に。
※運航情報・ダイヤ・料金は変更になる場合があります。乗船前に必ず南海フェリー公式サイト(nankai-ferry.co.jp)で最新情報をご確認ください。
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